社長はお隣の幼馴染を溺愛している
 こうやって、微笑みを交わし、要人と抱き合える日が来るなんて、思っていなかった。
 今、私たちは心の中に、同じ未来を描いている。

「絶対、幸せにする」
「今までも要人は、私を幸せにしてきたでしょ?」
「それじゃあ、今よりも、ずっと幸せに」

 未来の約束をして、優しいキスを目蓋に、頬に、唇に落として、要人はゆっくり体を撫でる。
 大切なものを扱うように、優しく。

「要人」

 これが、あの日のやり直しなら、こうするのが、きっと正しい。
 要人の頬を両手で包み、私からキスをした。

「……志茉」

 泣きそうな顔をしていた要人は、色々な感情が混ざり合った複雑な表情を浮かべていた。
 
「私も要人を幸せにしたい」

 要人は暗い所から、明るい所へ出てきたかのように、眩しげに目を細めた。

「俺が求める幸せは、志茉がいる場所だ」

 心の奥深くにある要人の孤独に触れた気がした。
 ずっと飢え、欲していたものを得るように、要人は黙って、私の肌の上に、赤い印をひとつ残す。
 そして、またひとつ。
 衣服を剥ぎ取り、体のラインをなぞり、順番に自分ものである証を刻んでいく。

「か……なめ……」
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