社長はお隣の幼馴染を溺愛している
 ちょうど昼のニュースが流れた。

扇田(おおぎだ)工業、粉飾決算か!?』
『社長みずから関与』

 大きなテロップが目に入り、まばたきを繰り返す。
 これは夢かと思ったら、夢じゃない。

「え、えぇ……?」

 火事のニュースではなく、まさかの扇田工業のニュースが流れ、頭が混乱した。

『実際にはない架空の売り上げを計上していたらしいですね』
『内部告発により、決算書が外部にもれ、発覚したとのこと』
『実際には赤字で火の車といったところですか』

 ――これをやったのは、要人だ。
 思い当たるフシはたくさんある。
 両家の食事会の時、要人はおかしなことを言ってたし、扇田工業とのお見合いは宮ノ入会長の紹介だとも。
 それに、結婚を断っても宮ノ入と関係が悪くなるような言い方をしてなかった。
 つまり。

「黒幕は宮ノ入グループ……?」

 取引先の扇田工業がおかしかったから、要人が動き、調べたというところだろうか。
 きっとこれは、一度や二度ではない。
 考え出すと、きりがないような気がして、パチンとチャンネルを変えた。
 要人が沖重グループの社長に、なんの意味もなく、抜擢されるわけがなかったのだ。
 宮ノ入グループの恐ろしさを知ったような気がした……
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