社長はお隣の幼馴染を溺愛している
 自信に満ちていて、堂々としていて、隙が一切ない。

 ――これが、宮ノ入グループのトップ。

 会長室の中央には、着物姿のおじいさんが杖を持って、黒革の椅子に座っていた。
 そばには、スーツ姿の黒目黒髪の男の人が立っている。
 二人とも落ち着いていて、どっしりしているイメージ。威圧感というか、貫禄がある。

仁礼木(にれき)。扇田の件だが、すべてうまくいった。ご苦労だったな」
「いえ、宮ノ入社長」

 黒髪で無表情の人が、宮ノ入グループの社長らしい。

「こちらこそ、母の件で、ご迷惑をおかけしました」
「気にするな。後はこちらがうまくやる」

 もし、おばさんが放火したとわかれば、宮ノ入グループにとってもスキャンダルになる。
 スキャンダルをうまくもみ消すか、誤魔化すか、宮ノ入の力を借りたのだとわかった。
 
「その娘が、結婚したい相手か」
「はい」

 宮ノ入会長と要人が対峙する。
 要人は笑顔だけど、私には龍と虎が戦っているようにしか見えない。

「沖重グループの経理課で、働かせていただいている倉地志茉と申します」
「ふむ」
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