社長はお隣の幼馴染を溺愛している
放火犯の正体
 火事から、一週間経った。
 犯人はすでにわかっているはずだけど、ニュースになっていないのを見る限り、これが宮ノ入(みやのいり)の力なのだとわかった。
 要人(かなめ)が言っていた来週あたりに見れる面白いものが、扇田(おおぎだ)のことを言っていたのなら、もうこれでなにもない。
 はずだけど――まだ、要人は私に家の敷地から出てもいいとは言わなかった。
 必要なものは、八重子(やえこ)さんが買ってきてくれるけど、退屈でしかたなかった。
 今日は八重子さんに野菜の苗を買ってきてもらい、小さな畑を作った。
 夏にはトマトやきゅうり、ナス、大葉が収穫できるはず。

「なんだか、懐かしい……」

 アパート前にあった畑は、両親が亡くなってから、時間がなくなり、他の人に渡してしまった。
 しばらく眺めていたけど、これが終わったら、もう他にやることがない。
 八重子さんは通いの家政婦で、夕方になると帰ってしまって、話し相手もいなくなる。

「要人は残業って言ってたし。恵衣(めい)に電話しよ」

 火事の後、無事だったことは伝えたけれど、会社をしばらく休むとは言ってなかった。
 仕事も終わっている時間だし、会社の様子も知りたかったから、電話することにした。
< 149 / 171 >

この作品をシェア

pagetop