社長はお隣の幼馴染を溺愛している
『身を低くして、嵐が過ぎるのを待つのね』
「……的確なアドバイスをありがとう」

 指輪に視線を落とす。
 いつから、用意してあったのか、サイズもぴったりで、私が好きそうなシンプルなデザインのもの。
 お互いのイニシャルが入っている。
 完全に要人のペースで、まるで、安全な家の中に閉じ込められているような気分になったのだった。

 ◇◇◇◇◇

「いつから、外に出てもいいの?」

 要人を仁王立ちで迎えたからか、さすがの要人も怯んでいた。
 八重子さんが作ってくれた夕食を食べながら、今後の話をすることになった。
 私がこのまま、おとなしくしていると思ったら大間違い。
 要人が説得しようとしても、無駄だってことを教える必要がある。

「まだ駄目だ」

 アジの干物とひじき煮、たたきキュウリ、いくらの醤油付けと味噌汁を前に、私と要人はバチバチと火花を散らす。
   
「もういいでしょ?」
「俺は一ヶ月でも一年でも家の中に閉じ込めておいたっていいんだぞ」  
「なに、堂々と監禁宣言してんのよっ!」
「心配だからな」
「要人の問題発言のほうが心配よ!」
< 152 / 171 >

この作品をシェア

pagetop