社長はお隣の幼馴染を溺愛している
 要人が残念そうな顔をしたのを見逃さなかった。
 やっぱり、私が黙っていたら、閉じ込めておくつもりだったようだ。
 本当に極端すぎる。
 私が怖い顔をしていると、要人も諦めたらしく、ちょっと考えてから言った。

「放火犯がわかった」
「え?」
「退屈なら、志茉も一緒に、仁礼木家に行くか? 退屈しのぎの余興くらいにはなる」  
「余興? 仁礼木家? 誰が放火犯だったの!?」
「決まってるだろ。俺の母親に」

 ――やっぱり、仁礼木おばさんだった。

 驚く私に、要人は顔色一つ変えずに言った。

「わかっただろ。俺が大丈夫だと思えるまで、絶対に家から出したくなかった」
「う、うん」

 嫌われているのはわかっていた。
 でも、アパートに放火されるほど、憎まれていたのだとわかり、正直、ショックだった。
 青ざめている私を見て、要人は多分、聞かなかったほうがよかっただろうと思っている。
 自分の母親が犯人なんて、私以上にショックを受けているはずなのに、要人は淡々とした様子で、アジの干物をほぐし、ご飯を口に運ぶ。

「おばさん、どうなるの?」
「さあね。宮ノ入の弁護士に、徹底的にやれと言ってある」
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