社長はお隣の幼馴染を溺愛している
 梨日子さんがバイトの高校生という可能性もあり得る。
 それくらい若く見えた。

「梨日子は二十歳だよ」

 確か清臣さんは三十歳。
 十歳下の梨日子さんが、緊張する気持ちもわかる。
 緊張している梨日子さんを可愛いと思っているのか、清臣さんは真っ赤な顔をしているのを見て、微笑んでいた。
 以前見た清臣さんは、穏やかだけど、どこか冷たい印象があった。
 でも、今は違う。

「兄さんをよろしく」
「はっ、はい! こちらこそ!」

 梨日子さんはお辞儀をし、何度も私と要人に頭を下げる。
 清臣さんと真逆の善人である。
 要人も同じことを思っていたのか、憐れみの目で梨日子さんを見ていた。

「嫌だな。まるで、要人は俺が梨日子を騙したみたいな目で見て困るよ」
「違うのか」
「違うよ。ね? 梨日子?」
「私の片想いだったので……。まだ信じられません」
「ほらね。でも、梨日子の片想いじゃないけどね」

 梨日子さんの照れた様子がまた可愛らしい。
 でも、私の目から見た二人の関係は、捕獲されたウサギちゃんとオオカミ。
 外見は穏やかそうに見えても中身はやっぱり、要人の兄なのだ。
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