社長はお隣の幼馴染を溺愛している
「で、でも……。私、両親が亡くなったせいで、高校時代の記憶があいまいな部分があって……そ、それで……」
「それも湯瀬さんは知ってるわよ。湯瀬さんも会いに行こうとしたけど、仁礼木さんの妨害で会えなかったのよ」
「妨害!?」
「別れた後だったけどね。湯瀬さんのほうは、嫌いで別れたわけじゃなかったから、志茉の様子を見に行ったわけ」

 思えば、あの頃の私は、とても不安定で、恵衣とでさえ、会話できない状態だった。

「会えないのは、仕方なかったとはいえ、湯瀬さんはどうなったか、ずっと気にしていたみたい。沖重グループに志茉が入社してきたのを知って、嬉しかったって言ってたわ」
「恵衣は気づいてたの?」
「うん。だって、あたしは湯瀬さんに憧れてたし。湯瀬さんは高校時代から人気があったもの。仁礼木先輩は別格で、もう殿堂入りみたいなものだけど」

 今、恵衣から衝撃的なことを聞いた気がする。
 要人のモテモテ殿堂入りは、どうでもいいけど、恵衣が湯瀬さんに憧れていたなんて、知らなかった。

「初耳なんだけど……」
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