社長はお隣の幼馴染を溺愛している
「そっか。おしゃれなお店が好きだろうなって、勝手に思ってたな」
「そうですか?」
「俺が倉地に持ってるイメージだよ」
「私がおしゃれに見えるのは、恵衣のおかげかも。服やコスメのアドバイスを的確にしてくれるんですよ」

 私の言葉を聞いた恵衣が、顔を赤くした。

「や、やめてよね! あたしは受付だから、身だしなみに気を遣うし……。ただ、仕事の延長線上として、志茉にアドバイスしてるだけなの!」
「確かに葉山はいつも綺麗にしているよな」

 毎日、頻繁に受付前を通る営業部のメンバーは、恵衣を見てうなずいた。
 店員さんが肉の皿を持ってくると、さっと受け取り、さっそくカルビを網の上に置く。
 炭火がいいかんじに肉の脂を落とし、じゅうっと音を立てた。

「倉地。飲み物はアルコール?」
「はい」
「ソフトドリンクのメニューも置いておくよ。倉地は途中でいつもソフトドリンクに切り替えるだろ?」
「そうですね。ありがとうございます」

 湯瀬さんは遠くにあったドリンクメニューを置いてくれる。
 営業の人たちと飲むのは、これが初めてではなかった。
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