社長はお隣の幼馴染を溺愛している
 毎年同じはずの私たちの墓参りなのに、あと何回、このやりとりをするんだろうと思ってしまうのは、隣の幼馴染でいられる時間が、それほど多くないと知っているから。
 お互い黙ったままの私たちは、きっと同じことを考えていただろう。
 なにも言わずに、要人は運転し、車は精進料理屋へたどり着く。

「朝食、食べてないだろ」
「うん……。でも……」

 高級そうな精進料理屋を見て、今朝、おばさんに言われたことを思い出してしまった。

「ん? どうした? 中に入るぞ」

 車から降りた私に、要人は手を差し伸べて笑う。
 なんでもない要人の笑顔が、今は安心する。

「……なんでもない」

 要人といられるのは、あと少しだけ。
 今はこの時間を大事にしようと思った――
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