社長はお隣の幼馴染を溺愛している
来年の約束
 要人(かなめ)が連れてきてくれた精進料理屋は、郊外にある緑の多い場所にあった。
 一日数組限定、予約のみの精進料理屋は、茶人が使っていた庵を改修したもので、とても趣がある。
 数寄屋造りの店に入ると、上等なお香の香りがふんわり漂い、心を落ち着かせてくれる。
 案内された部屋の窓からは、立派な日本庭園が見え、庭の緑が眩しい。
 茶室風の落ち着いた部屋は、しんっとしていた。
 衣擦れの音をさせ、着物姿の女の人が現れ、挨拶をする。

仁礼木(にれき)様。本日はご利用いただきありがとうございます。お料理を運ばせていただいてもよろしいでしょうか」
「ああ、頼む」

 要人が働きだしてから毎年、命日のお昼には精進料理屋に連れていってくれるようになった。
 それは私だからというより、私の両親への弔いのようなもので、この日だけはお参りを絶対に欠かさない。
 要人は実の両親より、私の両親に懐いていて、仁礼木のおばさんが、嫌みを言うほどだった。

「おじさんとおばさんは、料理好きだったよな。アパートの前に畑を作ってさ」
「そうね。今、畑は他の人が引き継いでくれてるけど、要人も一緒に野菜を収穫したわよね」

 食いしん坊だった両親を思い出してか、要人がお供えするものは、食べ物ばかり。
 精進料理屋の店選びも毎年、力が入っていた。
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