社長はお隣の幼馴染を溺愛している
 出てきた料理は、手打ちそば、甘い味噌がのった豆腐田楽、山菜や野菜の精進揚げ、湯葉で巻いた菜の花。
 どんどん出てくる料理は美味しく、器のほうも立派だ。
 レンコン団子のあんかけ、ゴマ豆腐、精進寿司――肉や魚がないのに、満足感のある料理の数々。
 デザートにイチゴとメロンが出ると、もう苦しくて、なにも入らない気がした。

「足りたか? 帰りに和菓子屋でも寄って、なにか買うか?」
「これ以上、食べられないわよ」

 要人は私が食事をちゃんと食べているかどうか、気かけていた。
 それは、きっと昔のことがあるから。
 両親が死んだ後、しばらく私はなにも食べられなくなった。
 そのせいなのか、要人は私が食べている姿を見るのが好きだ。
 メロンの果肉をスプーンですくい口にする姿を見て、要人は嬉しそうに笑う。

「来年もまた来ような」
「そうね……」

 私たちに『また』があるのかどうかわからない。
 
 ――来年も要人と一緒にいる姿が想像できない。

 いずれ一人で、お墓参りをする時がやってくる。
 それは来年か再来年。
 泣き止むのを待っていてくれる人はいない。

「なんて顔をしてるんだよ」
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