社長はお隣の幼馴染を溺愛している
「え?」

 またバカ面とか、言われるのかと思っていたら違っていた。

「来年も一緒に来るに決まってるだろ」

 思わず、また泣きそうになって、そばにあった湯呑みを掴んで、顔を隠した。
 今日は涙腺が緩いから、危険だ。

「そう」

 短く返事をし、顔を隠してお茶を飲んだ。
 要人に言いたいことが、たくさんあるのに、私はそれを口に出せずに、お茶と一緒に呑み込んだ。


 ◇◇◇◇◇


 食事が終わると、要人はアパート前まで送ってくれた。
 要人は貰い物のお菓子やハムの詰め合わせを手土産に、ちゃっかり私の部屋に入ってくる。

「ちょっと……」
「いるだろ?」

 高級ハムの詰め合わせは、とても魅力的で、ハムステーキにして夕飯の一品でもいいし、お弁当のおかずにも使える便利な非常食。
 
「仕方ないわね。要人が持ってきてくれたお菓子もあるし、お茶を淹れるわ」
「追い出されると思ったから、手土産持ってきた。先手を打って正解だったな」

 悔しいことに、ハムの詰め合わせを前にして、私は無力だった。
 そして、他に箱でくれたのは、焼き菓子詰め合わせ、フルーツゼリーなど。
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