社長はお隣の幼馴染を溺愛している
「合鍵がある。志茉の両親からもらった鍵だ」
「えっ……?」

 私の両親から、要人に渡された合鍵。それを持っていると初めて聞いた。

「俺は志茉を守れる。あの時とは違う」

 あの時――私たちが幼馴染の関係を続けるために、触れずにいた出来事。それを要人は口に出した。
 大学を卒業して就職し、社長になった要人。要人は不敵な笑みを浮かべ、唇を重ねた。

「……っ!」

 深いキスと、熱い手に私は気づく。

 ――要人は幼馴染に戻る気はない。

 後戻りできないところまで、壊してしまうつもりなのだ。
 繰り返すキスは、飢えた獣のように激しい。
 私の心も体も奪い尽くす支配的なキスは、頭の奥を痺れさせ、足に力が入らない。
 気がつくと体を支えられながら、服を脱がされ、我に返った。

「要人っ! だ、駄目っ!」

 要人の体を手で押しやり、首を横に振る。
 私の震える手を掴んで、要人はなおもキスをする。

「や、やめて……。今は仕事中でしょ!」 
「わかった。続きは仕事中じゃない時に」 

 そう言って、要人はあっさり私を開放する。
 私と違って、冷静で乱れのない要人は、最初からそのつもりだったと知る。
 要人は笑いながら、私の髪を指ですく。
 乱れた髪と服――全部、要人がやったことだ。

「志茉。ボタン、留めようか?」

 そう言った要人は、余裕があり、大人っぽくて、私の知らない人みたいだった。
 いつものふざけた要人ではなかった。

「じ、自分で、できるから!」
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