社長はお隣の幼馴染を溺愛している
理由
『立ち入り禁止』
アパートのドアに、大きく張り出した紙を見たはずだ。
なのに、それを無視して部屋へ侵入する悪い男がいる。
「要人! 張り紙を見たでしょ?」
「これか?」
「はがさないでよ。その立ち入り禁止は、要人に向けて書いたものよ。鍵だって、ちゃんとかけて……」
「鍵?」
要人は私の両親が渡した合鍵を見せる。
――ぐっ! 一番危険な人間に鍵を渡してるのよ! 私の両親はっ!
がっくりと畳の上に膝をついた。
ここで、諦めたら、要人のペースになってしまう。
すでに要人が部屋に入ってきた時から、向こうのペースになっているけど、負けるわけにはいかない。
「会社で、よくもあんな嫌がらせをしてくれたわね!?」
「嫌がらせ? キス?」
「ちがっ……それも違わないけど……」
「ああ、香水の名前がわからなかったからか? テールドゥエルメスだ。志茉が好きそうな香りだと思って使った。気に入ったなら、志茉も使うか?」
「使いたいから、名前を知りたいとかじゃないのっ」
そうじゃない。そうじゃないのに、要人はわかってるくせに、うまくはぐらかす。
アパートのドアに、大きく張り出した紙を見たはずだ。
なのに、それを無視して部屋へ侵入する悪い男がいる。
「要人! 張り紙を見たでしょ?」
「これか?」
「はがさないでよ。その立ち入り禁止は、要人に向けて書いたものよ。鍵だって、ちゃんとかけて……」
「鍵?」
要人は私の両親が渡した合鍵を見せる。
――ぐっ! 一番危険な人間に鍵を渡してるのよ! 私の両親はっ!
がっくりと畳の上に膝をついた。
ここで、諦めたら、要人のペースになってしまう。
すでに要人が部屋に入ってきた時から、向こうのペースになっているけど、負けるわけにはいかない。
「会社で、よくもあんな嫌がらせをしてくれたわね!?」
「嫌がらせ? キス?」
「ちがっ……それも違わないけど……」
「ああ、香水の名前がわからなかったからか? テールドゥエルメスだ。志茉が好きそうな香りだと思って使った。気に入ったなら、志茉も使うか?」
「使いたいから、名前を知りたいとかじゃないのっ」
そうじゃない。そうじゃないのに、要人はわかってるくせに、うまくはぐらかす。