社長はお隣の幼馴染を溺愛している
「ど、どうしてそんなこと急に……。おばさんの嫌みなんていつものことだし……」
「違うだろ。昔は素直に俺を頼っていたのに、あの後から――」
「やめて!」

 その先を言わないで欲しかった。
 ずっと蓋をしてきたのに――私たちの関係が壊れないようなかったことにして。
 
「志茉の両親が死んで、俺が志茉を抱いた後から、俺と距離を置いた。違うか?」
「ち、違うわ!」

 否定しても要人は私を逃がさない。
 私の腕を掴んだまま、放してくれなかった。

「仁礼木から、なにを言われた?」
「言いたくない!」

 ふわっと体が宙に浮き、大きな手に支えられたかと思ったら、そのまま、畳の上に押し倒された。
 痛くはなかったけど、驚いて要人を見上げた。

「要人……! 駄目!」
「じゃあ、ちゃんと逃げずに話せ! いつまで、俺から逃げるつもりだ!」
 
 顔を背けても、あごをつかまれ、要人のほうを向かせる。
 私がどんなに睨んでも、要人は私から絶対に、目を逸らさなかった。

「言わないなら、抱くぞ」

 外で怒った時の要人は、冷たい雰囲気を持つ。
 でも、私に対してだけは違う。
< 71 / 171 >

この作品をシェア

pagetop