社長はお隣の幼馴染を溺愛している
 夏休みに入るのを待っていたのか、それとも要人がインターンでいない時期を狙ったのか、おじさんとおばさんが揃って私を出迎えた。

「どうして呼ばれたのかわかるわよね? 志茉さん?」

 曾祖父が外交官だった仁礼木のお屋敷は、歴史を感じる洋館で、ダイニングにはシャンデリア、サンルームからは広い洋風庭園を眺めることができる。
 洋風の客間はふたつ。
 私が通されたのは、小さいほうの客間で、丸みを帯びたテーブルとソファーが置かれている。
 サーモンピンクのカーテンが日差しを遮り、室内は薄暗く感じた。

「あまりきつく言わないように、言っただろう? 要人は昔から、志茉ちゃんのご両親にお世話になっていたんだ」

 いつもいる家政婦の八重子(やえこ)さんは、でかけているのか、人の気配はなく、しんっと静まり返っていた。
 心細く感じたけれど、仁礼木のおじさんは、おばさんと違って優しい口調で言った。

「優しいご両親を亡くして、とても残念に思う。辛い志茉ちゃんを呼んで、厳しいことを言うつもりはないんだが……」
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