社長はお隣の幼馴染を溺愛している
　おかげで、沖重の受付はとても華やかだ。

「でも、そろそろクローゼットから、はみだしそう」
「ほどほどにね……」

　そんな話をしながら、化粧室から出ると、ちょうど愛弓(あゆみ)さんに出くわした。

「あっ！　倉地(くらち)さん、探してたんですよ～」
「私？」
「倉地さん。私と一緒に、倉庫の掃除をして欲しいんです！」

　今日の愛弓さんはベージュのベルト付きワンピースは、雑誌に載っていたハイブランドのワンピースで、春の新作。
　大きなリボン付きで、可愛らしい。
　
「それはいいんだけど……」
「そんな服装で倉庫の整理？　冗談でしょ？」

　段ボールやら、資料が雑多に置かれた倉庫である。
　ハイブランドのワンピースを着て、作業するような場所ではない。
　愛弓さんは不満そうに頬を膨らませた。

「だって～。今日は倉庫の資料を整頓するように、言われましたけど、段ボールを持つなんて、言われませんでしたし」

　言われなくても、なるべく動きやすい服装を考えると思うけど、愛弓さんはあくまで指示した人が悪いと言い張った。
　私と恵衣は顔を見合せ、すぐに私たちの意見は一致。ここから逃げることにした。
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