世話好き女子がクーデレ男子を愛育した結果 1
「帰るよ、総一郎くん」
「…………あかり」
「家に着いたらお説教です」
「あかりおねえさんからの?」
「そうです」
「……あかりかわいい」
「残念、今日は可愛くないあかりからのお説教です」
総一郎にチクチクと小言を言いながら自転車を押すあかりは、清谷にひらりと手を振る。
「またね清谷くん。……あ、タオルハンカチあげるから、気にしないでね」
「絶対洗って返しますっ……」
「えっ、あ、分かった」
「連絡します。返信待ってますから」
「了解! またね!」
清谷はあかりと総一郎の背中を見送りながら、心の中でガッツポーズをした。これでハンカチを返すことを口実に、またあかりに会える。この恋は絶対叶える。
そして、そんな決意をした後で気が付いた。
「え、あの二人ってどんな関係なんだ?」
帰るよとか、家に着いたらとか聞こえた気がする。いや、気のせいか。
きっと、どこかであかりが総一郎を助けて付き纏われているんだろう。可哀想に。清谷の考えはそこに落ち着いた。
付き纏われているどころか、一緒に住んでいる。
清谷、それは気のせいではない。
***