世話好き女子がクーデレ男子を愛育した結果



「あかり、三つ子の着替え手伝ってあげて」
「…………え」
「ほら、何してるの? 早くしてちょうだい。あかりがしっかりしてくれないとこの家は大変だから」



 キッチンからあかりを見て早口で指示を出した母は、忙しそうにフライパンを振るっていた。


 けれど、いつもならすぐに動けるのに、あかりはどうしてもその場から動けなかった。


 そして、思わず──。



「お母さん、私、今日誕生日」



 あかりの言葉で母は動きを止めた。
 そして、驚いた表情で顔を上げると、申し訳なさそうに口を開く。



「あ、あかりごめんなさい……お母さん忙しくて」
「……ううん」
「すっかり忘れちゃってたわ。あかり、誕生日おめでとう」



 あかりは返事が出来なかった。
 母は全然嬉しそうな表情ではなく、罪悪感に塗れた顔をしていたから。
 小さな手を握りしめ、あかりは弟達の部屋に向かった。



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