世話好き女子がクーデレ男子を愛育した結果
 


 7月29日。あかりの誕生日の前日。


 あかりは晩御飯に特大のサクサク海老フライを揚げて、部活終わりの総一郎の空腹を満たすことに成功した。
 しかし、あかりはそんな絶品海老フライにほとんど手を付けず、味噌汁を啜るだけで食事を終えた。


「あかり、大丈夫?」
「うん。夏バテ気味なんだよね。毎年だから心配しなくて平気だよ」
「そっか」



 食器を洗う私の隣で、総一郎が皿を拭きながら不安げにあかりの顔を覗き込む。
 あかりは誕生日を終えればこの不調も落ち着くと知っている為、笑顔を作って首を左右に小さく振った。


 総一郎は伊達にあかりと暮らしていない。
 あかりのことが好きで好きで、可愛くて可愛くて仕方がないのだ。
 だから、あかりのことは同居人以上にしっかりと見ているし、少しの変化くらい当たり前に分かってしまう。



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