世話好き女子がクーデレ男子を愛育した結果




 だから、あかりが無理をしていて、嘘をついていることくらい分かっている。
 けど、あかりのことはあかりから聞きたい。知りたがりではあるが、傷付けてまでは知りたいと思わない。


 総一郎は意外にもその辺の線引きがしっかりとしていた。



「……そっか」
「うん。ごめんね、気にさせ、っ痛!」
「えっ、どうしたあかり」
「ごめん。包丁洗ってたら切っちゃったみたい……」
「は!?」
「そんなに深くないから、だいじょ」
「大丈夫じゃないから」



 総一郎がシンクの中のあかりの手に視線を向けると、人差し指が切れて血がドクドクと流れている。
 片手に持っていたスポンジを置くあかりの手を引っ張り、とりあえずティッシュで抑え、ソファーに座らせる。


 あかりの家の救急箱の位置を把握している総一郎は、そこからすぐに消毒液と絆創膏を取り出しあかりの前に膝を付いて手当てを始める。
 あかりはその様子を見て顔をこわばらせた。



< 210 / 267 >

この作品をシェア

pagetop