世話好き女子がクーデレ男子を愛育した結果



 そんなあかりを見つめ、総一郎は口角を上げ、優しく甘い視線を送る。
 それだけで、あかりの心にある空っぽだったコップがたぷたぷに満ちていくのを感じる。



 あかりはそのコップが寂しさでカラカラに乾いたコップだと思っていたが、それは違う全く違う。



 そのコップは、あかりも自分の中に存在することを知らなかった、恋のコップだ。
 総一郎はあかりに無意識に恋を教え込んだ。
 ピンチに泣いている時に側にいて、何でもない時でも可愛いと伝え続け、心が崩れ落ちそうな時に一番欲しがる言葉を当たり前に与えた。
 総一郎のしつこいくらいな一途さが、あかりの心を染め上げた。


 ────そしてあかりは無意識に、やっと今、総一郎に恋をしている。


 あかりに寄り添い愛情を注ぎ続けた総一郎の無意識の苦労の甲斐あり、今初めてあかりの恋のコップに総一郎に対する甘い想いが注がれた。



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