世話好き女子がクーデレ男子を愛育した結果



 けれど、総一郎はあかりの自分さえ我慢すればという考え方を、少しでいいから変えて欲しいと思っている。


 その考えは、優しいあかりのことを必要以上に苦しめることもあるから。


 思ったことを打ち明ける、溜め込まない、吐き出していいと、そんなことで大切な人は離れないと、知って欲しかった。


 あかりがこんなにも優しく明るく育っているのは、愛されて育った証拠だ。
 たった一度のボタンのかけ違いが尾を引いている、そんな気がしてならない。
 


「総一郎くん、私は」
「あかりがこの先、誕生日の度に辛い思いをするのを見てるのが嫌だ」
「…………」
「伝えることが大切。……あかり、伝えなきゃ分からないから。自分が昔、誕生日だってお母さんに伝えたからとか思ってるのかも知れないけど、伝えなかったらお母さんはあかりの誕生日を忘れられて悲しい想いには気付かなかった」
「……で、でも」
「あかりは何も悪くなかった。だから、これからこの時間に電話をして想いを伝えるあかりも悪くない。怖がらなくていい」



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