世話好き女子がクーデレ男子を愛育した結果



 あかりは総一郎が隣に座ったことを確認すると、一呼吸置いてスマホで母の着信履歴を開いた。
 そして、それをタップする。
 総一郎の手を握る自分の手に、自然と力が入った。


 数コールしても出ない。
 もしかして忙しくしてるのかもしれないと、もう切ってしまおうか悩んだ時、不意に呼び出し音が止まった。
 あかりの心臓が大きく鳴る。


『────もしもし、あかり?』
「あっ、お、お母さん、こんな時間にごめんね」
『平気よ。何かあったの?』
「ううん、あの……話したいことが、あって」
『話したいこと……?』



 母の声が固くなる。
 やっぱり迷惑だったのか。
 あかりはそれを聞き、思わず何でもないと電話を切りたくなったが、キュッと口を結び耐えた。


 しばらくの間の後、スマホの向こうから再び声がした。



< 223 / 267 >

この作品をシェア

pagetop