世話好き女子がクーデレ男子を愛育した結果 1



 このマンションは住人の入れ替わりが激しくない。だから、ここに住んでいる者そうでない者の区別がつきやすい。


 それにしたって、あまりに不健康そうで、目が血走っているその男は見るからにおかしい。



「……なにしてんの」
「っ!……え、あ、あの、ここに知り合いがっ」
「だったら連絡でもして早く出てきてもらった方がいいよ」
「……それは」
「あと、この辺不審者が多いから警察が巡回してる」
「!!」



 男は総一郎の言葉に途端に顔を真っ青にし、慌てたようにその場から走り去っていった。


 あれは完璧に不審者だ。マンションの管理人に連絡を入れた方がいいかもしれない。


 それに、あかりにも話しておかなければ。


 あかりには間違えても怖い思いをして欲しくない。いつでも明るく幸せそうに笑っていて欲しい。


 総一郎は自分の感情が重たいとは気付いていない。




< 81 / 263 >

この作品をシェア

pagetop