世話好き女子がクーデレ男子を愛育した結果 1
「それ、多分さっき俺が見た奴だ」
「え?」
「帰ってきた時に彷徨いてたから追い払った。けど、まさかあかりに関係してるとは思わなかった」
あかりの話しを一通り聞き、総一郎は数時間前の自分を殴り倒したくなった。
あそこまで怪しい男だ。あの時追い掛けて警察に突き出していれば解決していたのに。
ベッドの上でやっと落ち着きを取り戻したあかりの横に座り、総一郎は今後のことに考えを巡らせ、ふと思った。
────アイツ、見たことあるような気がする。
「あかり、その男に何か心当たりない? 前に助けた相手とかで。場所もこの辺とかで」
「……待って、思い出すね。沢山いるかも……」
「沢山いるんだ」
あかりの人間性的に、困っている人を放っておけないのは分かるが、総一郎は少し複雑だった。
そして、あかりはハッと顔を上げる。その顔は真っ青だった。
「半年くらい前に……商店街の近くにあるスーパーがタイムセールしてて……いつもは行かないのにふらっと入って」
「うん」
「新しく入った店員さんなのか分からないんだけど、品出ししてたお菓子を台車から落としてばら撒いちゃってて」
「…………」
「一緒に拾ったんだけど。俺はダメな奴だって落ち込んでたから、誰でも最初は失敗するから頑張ってって……それだけだったんだけど」
「……そうだ、俺もスーパーよく行ってたから、アイツ見かけたことがあったんだ」
「あの人────」
────ピンポーン。
あかりは息を呑み、総一郎は瞬時に立ち上がる。
シンとした家の中、夜も深いこの時間帯、鳴ったのはエントランスではない。
ドア前のインターホン。