純愛
「また仲間外れ?」

つばきの声がして、俺とカンナはその声の方を見た。二階からの階段の途中、俺達がいる踊り場よりも下の方につばきが立っている。

キスしてたの、見られたかもな。俺とカンナはチラッと目配せしたけれど、すぐにつばきの方に向かった。

「つばき。昨日のこと、カンナに話してたんだよ。ごめん。俺の方が我が儘だった。つばきの気持ち、全然考えてなかった。」

つばきはまだ少しムッとした表情をしていたけれど、髪の毛をスッと触る仕草をしてから、言った。

「私だけ除け者は寂しいよ。」

つばきは怒っていた表情から泣いてしまいそうな目になった。

「除け者になんかしてないよ。」

カンナがつばきに近づいて、ギュッと抱き締める。つばきは拗ねた顔を、カンナの肩にコテン、と乗せた。

「うん。ごめんなさい。」

つばきのくぐもった声が聞こえる。カンナはよしよし、とつばきの背中をさする。

つばきが顔を上げて、俺を見て言った。

「幼馴染は特別じゃないなんて、嫌だよ。」

その瞳がキラッと光った様に見えて、まるでいつもの子供っぽい、俺の知っているつばきじゃないみたいで、俺はドキリとした。カンナに感じるドキドキとは違う。何かを見透かされている様な、見てはいけないものを見ているような、そんな目。

「うん。ごめんな。」

そう答えることが精一杯だった。俺はすぐにつばきから目を逸らした。
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