純愛
雨が降り続いている。六月。空気が蒸していてジメジメするし、体の中までカビてしまいそうだ。

「とーか君、つばきの左肩濡れちゃってるんですけど。」

幼馴染のつばきが俺の腕をギュッと掴んで文句を言う。「俺の右肩だって濡れてるよ。」と言い返したら、つばきの方がもっと濡れているんだと謎の対抗心を燃やされた。

そもそも梅雨で雨の日が続いているのに、傘を持っていないつばきが悪い。
でも甘えん坊のつばきに正論なんて到底響かない。
そうやって俺も、もう一人の幼馴染のカンナも長い間一緒に過ごしてきた。小学校に上がる前から、海沿いの田舎町で一緒に育ってきたから、もう十年以上の付き合いになる。

俺達は今年の春、高校生になった。
中学の卒業式のちょっと前、俺はずっと好きだったカンナに告白して、俺達は恋人同士になった。
つばきは自分だけ仲間外れだって拗ねたけれど、今も対して関係は変わっていない。

俺達三人は、バスで一時間くらいかかる街の方の高校へ、三人一緒に通っている。
田舎町で育った俺達は、中学までは当たり前みたいに一緒だったけれど、高校生になると離れてしまう友達も多かった。
でも、つばきが絶対三人一緒じゃなきゃ嫌だと言い張って、カンナのレベルに合わせて俺とつばきは猛烈に受験勉強をした。人生であれほど勉強机に向かうことは、これから一生無い気がする。

そうして見事、俺とつばきは元々の自分の偏差値よりも随分上の高校に合格して、三人一緒に高校生活を送っている。

今日はカンナがもう少し自習室で勉強していくと言って、俺とつばきは逃げ出してきた。
そうして今、傘を持っていないつばきと二人で、一本の傘を取り合いながら歩いている。
バスに乗る前はそんなに降っていなかったのに、地元に着いた途端、大振りになってきた。田舎だからなのかどうなのか、理由はよく分からないけれど。
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