純愛
「カンナ。つばきとちゃんと話をしよう。」
カンナの瞳は揺れている。こんなに不安そうで、見えない影に怯え続ける、小さい子供の様なカンナを久しぶりに見た。
どんなに小さな嫌がらせも、確実にカンナの心を蝕んでいた。その犯人が大切な幼馴染だったとなれば、カンナの心が立ち直るのも相当な時間がかかってしまうかもしれない。
「今ならまだ戻れる。俺とカンナの気持ちも、つばきの本当の気持ちもちゃんと聞こう。このままじゃ駄目だってつばきだってきっと分かってるよ。カンナが怖いならさ、俺だけでもいいし。つばきに話をするよ。」
カンナを落ち着かせる様に笑って見せた。たぶん、うまくは笑えていないけれど。
カンナはゆるゆると首を横に振って「私も、話したいよ。」と言った。
「じゃあ、いつ話をするか落ち着いたらまた決めよう。夜、何かあったらすぐに電話して。」
俺の言葉にカンナはコクン、と頷いた。カンナの手のひらをまた握って、じゃあねと言って離した。カンナは家の中に入っていく。その背中が見えなくなるまで、玄関のドアが閉まり切るまで、俺は見届けてから、二本目の坂を登り始めた。
坂を登り切って左に曲がる。畑の続く道沿いに、もうすぐつばきの家が見えてくる。俺は下を向いて、つばきの家の方は見ないようにした。
つばきの視線がずっと張り付いている様な気がした。
カンナの瞳は揺れている。こんなに不安そうで、見えない影に怯え続ける、小さい子供の様なカンナを久しぶりに見た。
どんなに小さな嫌がらせも、確実にカンナの心を蝕んでいた。その犯人が大切な幼馴染だったとなれば、カンナの心が立ち直るのも相当な時間がかかってしまうかもしれない。
「今ならまだ戻れる。俺とカンナの気持ちも、つばきの本当の気持ちもちゃんと聞こう。このままじゃ駄目だってつばきだってきっと分かってるよ。カンナが怖いならさ、俺だけでもいいし。つばきに話をするよ。」
カンナを落ち着かせる様に笑って見せた。たぶん、うまくは笑えていないけれど。
カンナはゆるゆると首を横に振って「私も、話したいよ。」と言った。
「じゃあ、いつ話をするか落ち着いたらまた決めよう。夜、何かあったらすぐに電話して。」
俺の言葉にカンナはコクン、と頷いた。カンナの手のひらをまた握って、じゃあねと言って離した。カンナは家の中に入っていく。その背中が見えなくなるまで、玄関のドアが閉まり切るまで、俺は見届けてから、二本目の坂を登り始めた。
坂を登り切って左に曲がる。畑の続く道沿いに、もうすぐつばきの家が見えてくる。俺は下を向いて、つばきの家の方は見ないようにした。
つばきの視線がずっと張り付いている様な気がした。