純愛
夏祭り当日。この日まで変わらずカンナには会っていたけれど、つばきとは全然連絡も取っていなかった。カンナは連絡していたかもしれないけれど、当日までお互いにわざとつばきの話題は避けていた。夏祭りに行くのにまるで決戦の日みたいに待ち構えた。正直、俺達にとっては「決戦」で間違いないだろう。
夏祭りが始まるのは十八時。それまでは家でダラダラと過ごした。母さんは婦人会の手伝いがあるとかで、朝から出ている。
音響のチェックだろうか。時々遠くから運動会の時みたいな音が聴こえてくる。
時間になって、支度をして家を出た。街の方の花火大会ならもっとしっかり支度するし、持ち物だってもう少し多いけれど、地元の夏祭りだ。
軽装で、財布とスマホだけをポケットに突っ込んで、家を出る。夕方でも空気は蒸していて、一日中冷房の効いた部屋に居たから、一瞬クラッとした。
カンナとつばきとは公園の前で待ち合わせている。遊具のある所から突っ切って、夏祭り会場のグラウンドには行ける。
公園の山型の、おにぎりみたいな形の白い滑り台の前で、カンナが手を振っている。小走りで駆け寄った俺に、つばきが遅いよ、と言った。
久しぶりに見たつばきにおかしな所なんて無くて、本当にただ待ちくたびれて拗ねた子供みたいな顔で俺を見上げている。
そんなに待たせてもないけれど、つばきは学校に行く時はすごく準備が遅いくせに、こういう時は誰よりも早い。楽しみで仕方なかったって感じだ。こんなつばきを見ていると、やっぱり全部が俺の考え過ぎで、話をするも何も、最初から何も無かったんじゃないかと思えてくる。
そうだったらいいのにって、願いも込めて。
「ごめん。行こう。」
「うん!」
つばきはにこにこと笑って歩き出した。その後ろから俺とカンナがついていく。
「つばき、浴衣着なかったんだな。」
前を歩いていたつばきが振り返って、「当たり前じゃん!」と言った。
「夏祭りは動きやすい服が鉄則なの!浴衣なんて着てたら食べたい物も半分くらいしか食べられないじゃん!」
つばきの言い分に、俺とカンナは顔を見合わせて笑った。
「確かに。」
カンナが楽しそうに笑う。
「でしょ!カンナちゃん、何食べる!?」
つばきも嬉しそうに、カンナの右隣に回って、カンナと腕を組んだ。俺がよく知っている光景だ。今日、三人で夏祭りに来て本当に良かったと思った。まだ始まったばかりだけど、きっとうまくいく。俺達は壊れたりしない。またいつもの三人に…。
夏祭りが始まるのは十八時。それまでは家でダラダラと過ごした。母さんは婦人会の手伝いがあるとかで、朝から出ている。
音響のチェックだろうか。時々遠くから運動会の時みたいな音が聴こえてくる。
時間になって、支度をして家を出た。街の方の花火大会ならもっとしっかり支度するし、持ち物だってもう少し多いけれど、地元の夏祭りだ。
軽装で、財布とスマホだけをポケットに突っ込んで、家を出る。夕方でも空気は蒸していて、一日中冷房の効いた部屋に居たから、一瞬クラッとした。
カンナとつばきとは公園の前で待ち合わせている。遊具のある所から突っ切って、夏祭り会場のグラウンドには行ける。
公園の山型の、おにぎりみたいな形の白い滑り台の前で、カンナが手を振っている。小走りで駆け寄った俺に、つばきが遅いよ、と言った。
久しぶりに見たつばきにおかしな所なんて無くて、本当にただ待ちくたびれて拗ねた子供みたいな顔で俺を見上げている。
そんなに待たせてもないけれど、つばきは学校に行く時はすごく準備が遅いくせに、こういう時は誰よりも早い。楽しみで仕方なかったって感じだ。こんなつばきを見ていると、やっぱり全部が俺の考え過ぎで、話をするも何も、最初から何も無かったんじゃないかと思えてくる。
そうだったらいいのにって、願いも込めて。
「ごめん。行こう。」
「うん!」
つばきはにこにこと笑って歩き出した。その後ろから俺とカンナがついていく。
「つばき、浴衣着なかったんだな。」
前を歩いていたつばきが振り返って、「当たり前じゃん!」と言った。
「夏祭りは動きやすい服が鉄則なの!浴衣なんて着てたら食べたい物も半分くらいしか食べられないじゃん!」
つばきの言い分に、俺とカンナは顔を見合わせて笑った。
「確かに。」
カンナが楽しそうに笑う。
「でしょ!カンナちゃん、何食べる!?」
つばきも嬉しそうに、カンナの右隣に回って、カンナと腕を組んだ。俺がよく知っている光景だ。今日、三人で夏祭りに来て本当に良かったと思った。まだ始まったばかりだけど、きっとうまくいく。俺達は壊れたりしない。またいつもの三人に…。