純愛
七
春。俺とつばきは二年生になった。
二年生では俺達のクラスは別々になった。つばきは休み時間のたびに俺の教室にやって来る。
この頃になると俺とつばきが付き合っているということはほとんどの友達が知っていたし、誰にも責められたりなんてしなかった。
むしろ周りは肯定的で、カンナちゃんも喜んでるよなんて言い出す奴まで居た。
俺があまり喋ったことも無いつばきの友達からは、つばきを守ってあげてねなんて言われる始末で、その度に俺は笑ってやり過ごした。
新学期も数ヶ月過ぎた頃、俺の周りで再び「嫌がらせ」を受ける女子が出た。
カンナの時みたいに不気味な物ではなくて、漫画なんかでよく見る、靴が隠されたり教科書を捨てられていたり、机に落書きされていたり。
だけどその女子がクラスで虐められている気配は無いし、嫌がらせが始まってからも変わらず女子同士の仲は良さそうだった。
仲の良い女子が先生に相談してくれたりもしていたし、見るからに虐めでは無いことは確かだった。
俺はその嫌がらせの犯人もまた、つばきだと分かっていた。
その女子が、俺がクラスで一番話す女子だったから。
移動教室で一緒に廊下を歩いていたり、教室で二人で喋ったりしているのを、つばきが遠くから見ていることにも気づいていた。
今年ももうすぐ夏休みがやってくる。
今年は去年と違って、梅雨が明けるのも早い気がしたし、今はもう太陽がカンカン照りで、教室のクーラーの設定も去年より二度くらい低かった。
その日の二時間目が終わって、休憩時間に入った。隣のつばきの教室から生徒達がガヤガヤと廊下に出てくる。
三時間目は美術だってつばきが言っていた。俺の教室の前を通り過ぎる時、つばきが俺に向かって手を振ってきた。振り返した俺をクラスの男子が羨ましそうに見てくる。
嫌がらせを受けている女子が、つばきが通り過ぎるのを待って、俺の席にやって来た。
「今日もラブラブだねぇ。」
その言葉には答えないで、「あのさ、三時間目サボれる?」と訊いた。
「何で?」
「隣、移動教室で見られないと思うし、ちょっと話したいことあるんだけど。」
つばきの教室の方を指差しながら言う俺に何かを察した顔をして、「いいよ。数学嫌いだし。」と言ってくれた。
二年生では俺達のクラスは別々になった。つばきは休み時間のたびに俺の教室にやって来る。
この頃になると俺とつばきが付き合っているということはほとんどの友達が知っていたし、誰にも責められたりなんてしなかった。
むしろ周りは肯定的で、カンナちゃんも喜んでるよなんて言い出す奴まで居た。
俺があまり喋ったことも無いつばきの友達からは、つばきを守ってあげてねなんて言われる始末で、その度に俺は笑ってやり過ごした。
新学期も数ヶ月過ぎた頃、俺の周りで再び「嫌がらせ」を受ける女子が出た。
カンナの時みたいに不気味な物ではなくて、漫画なんかでよく見る、靴が隠されたり教科書を捨てられていたり、机に落書きされていたり。
だけどその女子がクラスで虐められている気配は無いし、嫌がらせが始まってからも変わらず女子同士の仲は良さそうだった。
仲の良い女子が先生に相談してくれたりもしていたし、見るからに虐めでは無いことは確かだった。
俺はその嫌がらせの犯人もまた、つばきだと分かっていた。
その女子が、俺がクラスで一番話す女子だったから。
移動教室で一緒に廊下を歩いていたり、教室で二人で喋ったりしているのを、つばきが遠くから見ていることにも気づいていた。
今年ももうすぐ夏休みがやってくる。
今年は去年と違って、梅雨が明けるのも早い気がしたし、今はもう太陽がカンカン照りで、教室のクーラーの設定も去年より二度くらい低かった。
その日の二時間目が終わって、休憩時間に入った。隣のつばきの教室から生徒達がガヤガヤと廊下に出てくる。
三時間目は美術だってつばきが言っていた。俺の教室の前を通り過ぎる時、つばきが俺に向かって手を振ってきた。振り返した俺をクラスの男子が羨ましそうに見てくる。
嫌がらせを受けている女子が、つばきが通り過ぎるのを待って、俺の席にやって来た。
「今日もラブラブだねぇ。」
その言葉には答えないで、「あのさ、三時間目サボれる?」と訊いた。
「何で?」
「隣、移動教室で見られないと思うし、ちょっと話したいことあるんだけど。」
つばきの教室の方を指差しながら言う俺に何かを察した顔をして、「いいよ。数学嫌いだし。」と言ってくれた。