もふもふになっちゃった私ののんびり生活 ~番外編
そんな様子を日々見ていると、私が守らなければ!という意識がどんどんと芽生えていき、精霊化の進みも早まりました。
とりわけ、麓の家から一生懸命に布を運んで来た時など、布に足をとられて何度も何度も丘を転がり、そしてやっと到着したと思ったら人化し、幼子の姿でその布を頭からかぶって身に着けて私の根元を登り出した時など、ハラハラしながら見守っていました。
それなのにやはり、幼子の身長よりも高い私の根を這うように登っていたルリィは、何故か途中で立ち上がろうとし、あっと思った時には滑って転がり落ちて行きました。
さすがに毎日何度も転がっているからか、転がるのに慣れているのか頭を打つことなく身体を丸めて衝撃を逃がし、そのまま二回転した時には拍手したくなりました。
私は魔力で人の営みの様子を見守って来ましたが、人の行動の意味がルリィを見ているとなんとなく理解できるようになって来たのです。
「フウ……」とため息をついたルリィが、立ち上がりトテトテと覚束ない足取りで近づき、また私の根に登り始めた時には「止めて下さい!また転がりますよ!」と叫びたくなったものです。
それから何年もテチテチ歩き、コロコロ転がるルリィを見守り続け、決して言葉に出さなくても一人で寂しいと思っていることには気づいていました。
だから精霊化を急いでいたあの日、初めて結界に雨が降ったのです。
あの時、どうしても声をルリィに届けたくて、ずっと傍で見守っていることを知って欲しくて、必死で足掻いて気づくと精霊化をしていました。
まだ時間が足りず、言葉を紡ぐのにもたどたどしく、ほんの少しの時間しか実体化もできずないことにもどかしく感じましたが、ルリィの笑顔を見ればそんな想いも霧散しました。
だから、ルリィがその生を終えて何千年と一人孤独にこの地に残されようとも、私が精霊としての自我を得たことへの後悔は全くありません。
これからのルリィとの時間を思えば、それくらいはどうということもありませんしね!
だから、ルリィと二人での幸せな日々にお邪魔虫の陰が早速纏わりついているのが少しだけ、そう少しだけ心がざわついたので、街へ行くまでの時間を二人きりで過ごしたのは意地悪でもなんでもないと思うのです。
ルリィ。貴方の笑顔は私に感情をくれました。だからいつまでも笑っていて下さい。