もふもふになっちゃった私ののんびり生活 ~番外編

「えーと、たしか一年中緑の葉っぱで、こう、木の先がとんがっているように茂っている木を使っていたよ」

 こう!と両手を上に上げ、先の尖ったもみの木を表現してみる。それでも足りない気がして、ちょっと背伸びもしてみた。

「……私も紅葉も落葉もしません。あとは先がとんがるように茂ればいいんですね」
「えっ!ちょっと、セフィー!別に、クリスマスをしたいって思っている訳じゃないんだから!」

 だって、そんなにクリスマスツリーとかに思い入れもないし!せいぜい子供の頃に、家族でホールケーキを食べられたのがうれしかったくらいで!大学時代というか付き合っていた恋人なんて一度もいなかったし。……なんかかえってクリスマスを思い出したら虚しくなってきたんだけど。

「……ちょっと離れていて下さい」
「ええっ!!」

 精霊樹の木の枝が風もないのにわさわさとざわめき出し、枝がギシギシと音を立てながら上方へと角度を変えようとする。

 えっ、ちょっと!セフィーってそういうことまで出来ちゃうのっ!でも、精霊樹はどちらかというと高さは高いけど、「このー木なんの木~♪」の木のように、どちらかというと枝が広がっている木なのに!

 バサバサ、ポキパキ、ギシギシと不穏な音とともに小枝や葉が落ちて来たので、木の根元から離れながらも叫ぶ。

「セフィー!いいから、私はそのままのセフィーが好きだから、無理なことはしないでっ!セフィーがツリーになりたいなら、そのままでも大丈夫だから!」

 その叫びは無事にセフィーに届いたのか、動きがピタリと止まる。

「本当ですか?私を、ツリーと思ってくれるんですか?」
「うんうんっ!飾りなんてないけど、家にある布を持って来るからっ!飾り付けしましょう!」

 にっこりと笑顔で頷くセフィーの姿に、これからの大仕事を考えてため息が出そうになったけれど、なんとか堪えて笑顔を浮かべた。



「セフィー、ほら、こうして光で照らすととても綺麗よ」
「そ、そうですか?きちんと私もツリーになれましたか?」
「もっちろんよ!今までで一番のとびっきりのクリスマスツリーだわ!」

 何度も家から精霊樹までを往復し、家にあったシーツやカーテンの替えなどの全ての布を持ち出し、最近少しは維持できるようになってきた風を足に纏って飛び上がりながら、精霊樹の枝に巻き付けて飾り付けて行った。
 リボンは無かったから、蔦を結んでドレープを作って布にも変化もつけた。

 そうして暗くなった頃には、浮かべた魔法の光に照らされた精霊樹は見上げて見える場所は全て飾り付けされていた。
 シーツの白い布が一番多いからか、薄明りに照らされて白く浮き上がる様は雪が積もっているようで、華やかさは足りないがクリスマスツリーとは違う美しさがあってとても綺麗だった。

「……それは良かったです。私でも、少しは寂しさを埋められていますか?」
「セフィー……。ふふふっ。セフィーが居てくれるから、もう、寂しさなんて感じていないよ。いつもセフィーにはとっても感謝しているんだから」

 ふふふっとお互い向き合って笑い合えても、確かに手を取って温もりを分け合えることは出来ないことは残念だと思うこともあるけれど。

 この日はチラチラと舞う雪も相まって、忘れられないホワイトクリスマスの思い出となったのだった。


 

** 季節外れですが、クリスマスの日に書いた番外編でした **
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