白衣と弁当
「あの……」
「はい?」
父にお弁当を届けにきた研究室、ドアを開けると背の高い白衣の男が振り返った。
黒縁眼鏡の奥の目が私とあったまま、手に握った駄菓子をさくっと囓る。
ぽろぽろと落ちるお菓子のくずに気づいたのか、慌てたように払い落とした。
「あの、父、大朝はいますか?」
「ああ、教授ならいま出てて。
もうすぐ戻ると思いますけど」
「そうですか」
どうしようかな。
待つか預けて帰るか。
男の人は私を無視して新しい駄菓子を開け、囓りながらパソコンに向かってる。
よれよれの白衣、寝癖なのか跳ねてる髪。
さっきからぽろぽろ駄菓子のくずを落としながら食べてるから、あちこちについてる。
「すみません、これ、父に渡してもらえますか」
結局、私だって午後からの授業があるんだし、預けて帰ることにした。
駄菓子でいっぱいの口をもぐもぐしながら再び男が振り返る。
「……、あー、はい。
わかりました」
ごくんと飲み込むとお弁当箱の入った袋を受け取ってくれた。
これにて任務完了。
私も早くごはんを食べよう。
この春に入学した大学は父の勤め先でもある。
父がいるからこの大学を選んだのではなく、たまたまだ。
「はい?」
父にお弁当を届けにきた研究室、ドアを開けると背の高い白衣の男が振り返った。
黒縁眼鏡の奥の目が私とあったまま、手に握った駄菓子をさくっと囓る。
ぽろぽろと落ちるお菓子のくずに気づいたのか、慌てたように払い落とした。
「あの、父、大朝はいますか?」
「ああ、教授ならいま出てて。
もうすぐ戻ると思いますけど」
「そうですか」
どうしようかな。
待つか預けて帰るか。
男の人は私を無視して新しい駄菓子を開け、囓りながらパソコンに向かってる。
よれよれの白衣、寝癖なのか跳ねてる髪。
さっきからぽろぽろ駄菓子のくずを落としながら食べてるから、あちこちについてる。
「すみません、これ、父に渡してもらえますか」
結局、私だって午後からの授業があるんだし、預けて帰ることにした。
駄菓子でいっぱいの口をもぐもぐしながら再び男が振り返る。
「……、あー、はい。
わかりました」
ごくんと飲み込むとお弁当箱の入った袋を受け取ってくれた。
これにて任務完了。
私も早くごはんを食べよう。
この春に入学した大学は父の勤め先でもある。
父がいるからこの大学を選んだのではなく、たまたまだ。
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