離婚するはずが、極上社長はお見合い妻に滾る愛を貫く
第三章 ロスタイム~夫の彼女になりました~
第三章 ロスタイム~夫の彼女になりました~
人間あまりに驚くと考えるということを放棄するみたいだ。完全に思考停止してしまったわたしは、なぜだか慶次さんの車の助手席に座っていた。
「和歌、間に合いそうか?」
「え、はい」
あの場で固まってしまったわたしを心配した慶次さんが、会社まで送ってくれるという。本来なら断るべきなのだろうが、驚きでなにも考えることができずにそのまま頷いてしまった。
やっと落ち着いて考えられるようになった時には、すでに会社の近くだった。遅刻しそうだったのに車で送ってもらえたので、いつもよりも少し遅いくらいの時間に到着できそうだ。そうとなったら気になるのは、なぜ彼が隣の部屋から出てきたのかということだ。
「あの、慶次さん。どうしてあんなところに?」
「ははは、あたり前のこと聞くんだな。住んでるからに決まってるだろ」
「住んでる? 慶次さんが?」
簡単な話なのに突拍子がなさすぎて理解できない。
「そうだ。ふたりで住んでいた部屋はひとりで住むには広すぎる。だから引っ越しをした。わかった?」
「はい……って、いやわかりますけど。わかりません」
「あはは、なんだよそれ」
笑っているけどおかしいのはわたしじゃなくて慶次さんの方だ。