離婚するはずが、極上社長はお見合い妻に滾る愛を貫く
その日一日はさんざんだった。朝はギリギリの出勤になり、息つくひまもないまま仕事を始めた。
ただでさえ新しいことばかりだから、気を張っていないといけないのに、朝の事件が頭をよぎって集中力をそがれた。大きな失敗はなかったものの、小さなミスがちらほら。そもそも任される仕事が少ないのに失敗なんかしている場合じゃない。
午後からはなんとか気持ちを落ち着かせて、ひとつひとつこなしていった。
社会人ってプライベートでなにかあってもきちんと仕事をしなくちゃならない。わかっているけれど、なかなか難しい。またひとつ勉強になった。
だからといってなるべくこんな気持ちで仕事をしたくない。わたしは帰宅すると着替えを済ませてから、彼の帰りを待つことにした。
こういう時に隣だと便利って、違う! 便利じゃダメなのに。こんなにすぐに会える距離なんて彼のことを忘れることができない。
とにかくロスタイムなんて受け入れられない。なんとか話をしなくては……とはいえそんなことを考えていると、疲れ切った体に睡魔が襲ってくる。
これは……このまま眠ったら絶対明日の朝、困る。なんとかシャワーだけ浴びて明日の準備をして……それから今日教えてもらったことの復習もしておきたい。
なにもしないで彼が帰ってくるのを待っている時間はない。『待っている』と連絡をしてもいいけど、そうすると慶次さんはなんとか都合をつけて戻ってくるに違いない。いくら大事な話し合いだからといって、緊急事態でもないのに彼を呼びつけるのは違う気がするし……。
「あぁ、もう。とにかく先に色々やらなきゃ」
わたしは慌ただしく食事やお風呂を済ませた。するとお決まりのように襲ってくる睡魔。それと戦いながら仕事の復習をする。
しかしまったく頭に入ってこない。わたしはソファにゴロンと横になった。
「あ~もう、慶次さんまだかな」
その呟きの直後、睡魔の大波にのまれたわたしは、そこから記憶が途絶えた。