離婚するはずが、極上社長はお見合い妻に滾る愛を貫く
「白木さん、少し和歌さんとお話しさせていただいてもよろしいでしょうか?」
彼は祖父に許可を取りつつこちらに視線を向け、涙目のわたしに優しく微笑む。その笑顔につられて、なにも考えずに小さく頷いた。
「わかった、じゃあ後は慶次くんに任せて、儂は先に帰る。ここのラウンジのケーキは美味しいらしいぞ、和歌」
「もう、子供じゃないんだからね」
最後は努めて明るく振る舞った。めそめそしていたら祖父が心配すると思ったからだ。
「では、和歌さん。まいりましょうか」
和室を出て館内を進み、広大な日本庭園へ向かった。桜の花びらが舞う中、白無垢の花嫁が写真撮影をしている。
小田嶋さんの後について歩きながら、ぼーっとその様子を眺めていた。すると小田嶋さんが足を止めたので、わたしもその場で止まった。
「綺麗ですね」
「あ、はい。そうですね」
「和歌さんには白無垢も似合いそうですね」
「え、そうですか……」
それってどういう意味なの? まるで結婚を示唆(しさ)するような発言に色々と考えてしまう。
「そんなふうに緊張しないでほしい。って言っても無理か。初対面だし君から見れば俺はおじさんだしな」
笑みを浮かべて前髪をかき上げる姿は、どこからどう見てもおじさんだなんて表現できないほど素敵だった。大人の色気ってこういうことを言うんだって初めて理解した。