離婚するはずが、極上社長はお見合い妻に滾る愛を貫く
また大声をあげた唯に「しー」と声のトーンを落とすように頼む。彼女は不満顔のままビールを飲みながら話の続きを聞く。
「それは確かに怪しいかも。でも本人に直接聞いたの?」
わたしは頭を左右に振った。
「そんなの聞けるわけないよ。だって知らなければみじめにはならないもの」
好きになってもらえないだけなら仕方ない。けれど彼の口から他の人が好きだなんて聞いてしまったら立ち直れそうにない。
「怖いよね。それは」
唯はわたしの背中を優しくさすってくれた。今まで誰にも話せなかったことを口にし、共感してもらえたことで心が軽くなる。
「でもそれじゃ意味不明だよ。どうして離婚できないの?」
「それなのよ、もう理解できなくて」
なぜだか彼も隣の部屋に引っ越してきたことを話した。
唯がまた大声をあげるかと思っていたけれど、今度はわけがわからなかったのかあんぐりと大きな口を開けてこちらを見ている。
「いったい、どういうこと?」
「そうだよね、そうなるよね」
わたしだってどういうことか知りたい。だからこうやって恥を忍んで唯に相談しているのだ。
「だってそれじゃあ、あ、ちょっと待って」
唯のスマートフォンが鳴った。どうやら彼氏から連絡があったようだ。