離婚するはずが、極上社長はお見合い妻に滾る愛を貫く
「でもキスはしたの」
口にしてしまってから、しまったと思った。これはまだ唯にも話していないことだ。
「ちょっとそれ聞いてないわよ。最近のことなの?」
わたしが頷くと唯は頭を抱えた。
「ますます意味がわからないわ」
「わたしが離婚を言い出したから焦ったのかなって。白木の家との繋がりがなくなるから」
考えられるのはそれしかない。
「絶対そうだよ! だって今まで和歌に寄ってきた男もそうだったじゃん」
「そうかな、もっと単純な話だと思うけど」
唯はわたしの意見に全面的に賛成のようだけれど、卓哉くんは違うみたいだ。
「どういう意味?」
卓哉くんの言葉に唯がかみついた。興奮している唯を宥(なだ)めるようにして話し始めた。
「だって考えてみろよ。慶次さんっていうのはあのテックコントラクトの社長だろ。もし和歌ちゃんの実家の財産が目当てなら、さっさと和歌ちゃん自身を自分のものにしてるはず。それこそ子供でもできたら安泰だからな」
「な、卓哉ったらそんな悪いこと考えるなんて! ひどい」
「おいおい、仮の話だろ。でも実際彼はそうはしなかった。なんでだと思う?」