離婚するはずが、極上社長はお見合い妻に滾る愛を貫く
　テレビやインターネットでも多くのＣＭが流れており、知らない国民はいないと言っても過言ではない。

　たしか大学生が就職したい企業ランキングの上位にいつも名を連ねている。ブラックが多いなんて噂のあるＩＴ企業において働きやすさも人気の理由のひとつだ。

　自分の見合い相手が思ったよりもすごい人だと知って驚くと同時に、この話はきっと〝ご縁がなかった〟ことになるんだろうなと予想する。

　彼は自分のことをおじさんだなんて言ったけれど、彼のどこを取ってもそんな要素はひとつもなかった。絵に描いたような素敵な男性そのものだ。

　だからこそなんの取り柄もないわたしと、結婚しようだなんて思わないだろう。祖父だって無理強いはしないと言っていたのだから、この話を断って彼が不利益を被ることなんてないのだ。

　彼の後をついていきながらそんなことを考えていると、いきなり彼が足を止めて振り向いた。

「それで、今回のお話ですが――」

「はい、わかってます。祖父にはわたしの方からよく言っておきますので」

　祖父にはうまくいかなかったと伝えれば十分だろう。残念には思うだろうけれど、きっとしばらくしたら飽きもせずに次の相手を見つけてくるに違いない。

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