離婚するはずが、極上社長はお見合い妻に滾る愛を貫く
「え~そんなラッキーってあるんだな。もしかしてそのオーナーって慶次さんじゃないの?」

「え、まさか!」

 そんなことはないと言おうとして、そうも言い切れないような気がしてきた。唯もそう思っているらしい。

「もしそうだとしたら、ますますわけがわからないわね――あっ。職場の先輩からだ」

 唯がバッグから取り出したスマートフォンの画面を確認する。

「わたしエントランスで電話してから行くね。先に行って。部屋番号わかるから」

「ここで待つよ」

「いや、なんかやらかしたかもしれない。怒られてるところ見られたくないし」

 その気持ちはわかる。特に好きな人には見られたくないに違いない。

「わかった。じゃあ先に行くね」

 わたしと卓哉くんは唯を置いてふたりでエレベーターに乗り込んだ。部屋に着くまでも卓哉くんはずっとエレベーターや廊下いたるところで、「すげー」を連発していた。

「唯、ここまでたどり着けるかな。やっぱり離れたところで待っていた方がよくない?」

「あいつすごく記憶力はいいから。それより早く部屋の中に入ろう」

 卓哉くんは中の様子も知りたいらしく、わたしは急かされた。

「あ、うん。すぐ鍵開けるね」

 鞄から鍵を取り出して玄関のドアを開けようとした時、背後から声が聞こえた。

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