離婚するはずが、極上社長はお見合い妻に滾る愛を貫く

「そこでなにをやっている?」

 ふたりとも驚き、同時に声のする方へ振り向いた。

「えっ?」

「だからなにやっていると言っている!」

 あれ、この声は間違いなく慶次さん?

 確認したいのに卓哉くんが前に立っていて見えず、背後から顔を出すと、怖い顔をした慶次さんがいた。

「なにって、あなたは誰ですか」

 いきなり現れた男に驚いた卓哉くんがそう尋ねるのも無理はない。わたしは必死になって彼が慶次さんなのだと説明しようとするけれど、先に慶次さんが口を開いた。

「誰だと。俺は和歌の夫だ」

 夫……そう慶次さんはわたしの夫。

「えっ」

 卓哉くんが驚いた声を発したと同時に慶次さんの後ろのエレベーターの扉が開いて、唯が現れた。

 察しのいい唯はすぐに、この状況を把握したみたいだ。

「君はたしか、和歌の友達の……」

「平谷唯です。どうしたんですか? みんな揃ってこんな廊下で」

「それはこの男が俺の和歌を」

 怒りが収まらないのか、慶次さんはわたしの肩を抱いて卓哉くんから引きはがした。
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