離婚するはずが、極上社長はお見合い妻に滾る愛を貫く

「おい、バカ。すみません、こいつも結構飲んでて」

 卓哉くんが慌てて唯の手を掴んだ。

「だって、見ていられないんだもの」

「あまり首を突っ込むな。帰るぞ」

「え、だって飲み直すんじゃなかったの?」

 立ち上がった卓哉くんが唯を立たせる。

「夫婦の邪魔はしちゃだめだろ。ほら、早くしろ」

 卓哉くんは唯のバッグを手にすると「失礼します」と言って、さっさと唯の手を引いて玄関に向かった。

「和歌、また連絡するからね」

 玄関の方から唯の声が聞こえた。わたしが返事する間もなく、ふたりは部屋を出ていった。

 慶次さんはふたりを見送るために、後を追って玄関に向かった。

 ふたりが帰って、部屋が静まり返る。慶次さんは戻ってくるとわたしに頭を下げた。

「和歌、悪かったな。せっかくの友達との時間を」

 彼がソファの傍らに膝をついてわたしの顔を覗き込む。

「……いいえ、きっとふたりもわかってくれると思います」

 わたしがさっきの店で慶次さんのことを散々相談したから、気を利かせてふたりっきりになるチャンスを作ってくれたに違いない。

「代わりと言ってはなんだけれど、俺と飲むか?」
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