離婚するはずが、極上社長はお見合い妻に滾る愛を貫く
 急な提案だったけれど、断る理由なんてない。わたしが頷くと彼は隣の自分の部屋からビールやワイン、おつまみを持ってきてくれた。

 リビングのローテーブルの上に、色々と並べる。ワインなんてほとんど飲んだことがなかったから少しわくわくしている。

「これ高いですか?」

 ワイン=高級というイメージがあるので、思わず聞いてしまった。

「和歌、値段は気にしないで。とりあえず美味しいかどうか飲んでみて」

 慶次さんがオープナーを使って器用に栓を抜いてくれた。持ってきてくれたグラスに少しだけ黄色みがかった透明の液体が注がれる。

「ワインといえばフランスやイタリアが思い浮かぶと思うが、チリのワインも負けていない。リーズナブルなのも魅力だな」

「そうなんですか、確かにイメージがなかったかも」

 注がれた白ワインのグラスを持ち上げる。自分のグラスにも注いだ慶次さんとグラスを掲げた。

「乾杯」

 口に含むと一番にフルーティな香りが広がる。くせもなくすんなりと飲める。

「美味しい。もっと飲みづらいかと思ってました」

「まあこれは比較的飲みやすいものだからな」

「慶次さんは物足りないんじゃないですか?」

「いや、これはこれで楽しみ方があるから。まあ、こんなに偉そうに言ってるけど、普段はあまりワインを飲まない。付き合いがあるから知識として知ってるだけで」

 教養としてワインを知っているということだ。彼のような立場の人は様々な知識が必要なのだと改めて思い知る。
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