離婚するはずが、極上社長はお見合い妻に滾る愛を貫く


「そうか、よかった。では、式の日取りなどは改めて俺が白木さんにご挨拶に行った際に決めようか」

「はい……え、なんておっしゃいました?」

 聞き間違いだろうか。一度は頷いたものの、もう一度彼に尋ねてみる。

「式の日取りだよ。そんなに遅くない方がいいと思うんだけど」

「え、誰のですか?」

 自分で言っていて、パニックになっているのがわかった。だけどそうなるのも無理がないほどわたしは驚いている。

 目を見開き彼を見つめるわたしを見て、彼は顔をほころばせた。

「もちろん俺たちふたりの結婚式だよ」

「ふたりの……結婚式」

「そう、あれ。もしかして結婚に前向きなのって俺だけだった?」

「いや、そういうわけじゃないんですけど。あの……わたしでいいんですか?」

 こういう大切なことは、はっきり聞いておくべきだ。勘違いだったら後から恥ずかしい思いをする。

「白木和歌さん、俺と結婚しませんか?」

 終始柔和な笑みを浮かべていた彼が、真剣な表情で告げた。その澄んだまっすぐな目に見つめられたわたしは思わず……。

「はい。よろしくお願いします」

 気が付けばそう答えていた。その瞬間、強い風がびゅうっと吹いて、桜の花びらが周囲に舞う。

 その中で微笑む彼の顔が、わたしの頭にいつまでも残って離れなかった。

 彼とならばトラウマを乗り越えてうまくいくかもしれない。

 初対面にもかかわらず、そう思わせるなにかが彼にはあった。
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