離婚するはずが、極上社長はお見合い妻に滾る愛を貫く
 なんでもないことのように言われても困る。いまだにそういった場所には一度も参加したことがないのだから。

「どうしていきなり? 今まで通り七尾さんにお願いすればいいんじゃない?」

 今までこういったパートナー同伴の行事には七尾さんが同行していた。なぜ今回に限りわたしなのか不安になる。

「なんでそんなに嫌がるんだ。たまには俺の願いを叶えてくれてもいいだろう?」

 確かに慶次さんがわたしにお願いしてくるなんて珍しいことだ。たいていわたしがいつも迷惑をかけている。

 もしかして七尾さんと距離を取ろうとしているのかな? なんて自分に都合のいいことがちらっと頭をよぎる。

「でもわたしそういった場所は不慣れなので。それにわたしたちの結婚を公にしていいんですか?」

「これから慣れていけばいいし、パートナーとして出席するだけだ。誰も結婚しているなんて思わないだろう」


 これからという言葉に、色々期待を寄せそうになったが冷静になる。

「本当に後悔しても知りませんから」

「ああ、そんなことはないと思うけどな」

 わたしは渋々ながら慶次さんの願いを聞くことにした。

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