離婚するはずが、極上社長はお見合い妻に滾る愛を貫く

　そう言ってもらえると気持ちが軽くなる。

「ありがとう。うれしい」

　わたしが笑った瞬間、慶次さんの手が伸びてきてわたしの頬に触れた。

「本当は誰にも見せたくないな。こんなにかわいい和歌を」

「大袈裟ですって」

「いや、俺はいたって真剣だ」

　慶次さんの顔がわずかに近づいてきた気がした。これってもしかして……。ドキドキしてどうしたらいいか迷っているところに、ドアをノックする音が聞こえた。

「はい」

　慶次さんがまとう雰囲気が、すぐにいつものものに変わる。かたやわたしはまだ胸のドキドキが止まらない。

「社長、そろそろお時間です」

「わかった」

　扉の向こうから現れた人に少し緊張する。別に彼女になにかされたわけではないのでそんな必要ないのだけれど。しかし以前からどこからどう見ても完璧な七尾さんには近寄りがたかった。

　その上、慶次さんとのあれこれがあって彼女を見ると余計に警戒してしまう。

　失礼だとはわかっているけれど、うまく感情がコントロールできない。挙動不審になっていないかと心配になる。