離婚するはずが、極上社長はお見合い妻に滾る愛を貫く
けれど七尾さんはわたしのそんな心配をよそに、美しい凛とした佇まいで立っていた。自分がいかにコンプレックスの塊なのか意識してしまう。
せっかく慶次さんがかわいいって言ってくれたのに。とにかく今日は少しでも彼の隣にいても恥ずかしくない振る舞いをしたいと思った。
慶次さんと控室を出てパーティー会場に向かう。ホテルの大広間にはたくさんの人が集まっており、テレビで見たことのある政治家や実業家が集まっていた。
緊張からごくりと唾をのみ込み、小声で慶次さんに文句を言う。
「話が違うじゃないですか。小さなパーティーだって聞いていたのに」
始まったばかりですでに怖気(おじけ)づいている。
「そう? でもまあ今日はただの誕生会だから。君もおじいさまのところで会ったことがある人がいるんじゃないのか」
確かに数人は知っている顔があった。だからといって緊張がなくなるわけではないけれど、少しだけ安心できた。
「さあ、ちょっと面倒だけど挨拶に付き合って」
「はい」
とにかく笑顔で話の邪魔にならないようにする。今日の目標はこれだけなんだからしっかりしなくちゃ。
わたしは慶次さんの隣で出会う人たちに、失礼にならないように心掛けた。