離婚するはずが、極上社長はお見合い妻に滾る愛を貫く

 それから話はとんとん拍子に進んだ。本来ならば一年近くかけて準備するはずだが、わたしたちの場合は祖父の体のこともあり、できるだけ早く結婚したいというのが唯一の条件だった。

 経済界でも有名な両家の結婚となれば、あらゆる憶測が飛び交う。

 マスコミというのはあることないことを書き立てるのが仕事だとわかっているけれど、わたしがまだ学生ということもあり、結婚についてはごく身近な人だけに知らせることにした。

 そして出会ってから五カ月経った九月の秋晴れの下、わたしは白無垢を身に着け、朱傘をさした巫女に先導されて小田嶋さんと参道を歩く。

 彼は慣れない着物のわたしを常に気遣ってくれた。これから先こうやってふたりで歩んでいくのだと実感する。

 神殿には神楽が流れ、厳かな雰囲気が醸し出されている。祖父や小田嶋家の親族だけの小さな式だったが、三々九度、別名夫婦固めの杯を交わし、わたしたちは夫婦となった。

 わたしの左手には小田嶋さんがはめてくれた指輪が光る。普段は公にしないからいらないのでは?ということを伝えたのだが、彼が『形も大事だから』と言って買ってくれた。

 今日のこの式でしか使わない予定の指輪。しばらくの間、出番がなくもったいないと思うけれど、結婚を公にしないと決めたのだから仕方ない。
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